わかっているとは思いますが…「ポケモンGO」は無料のアプリです

ポケモンGO自体に関する話題は、そもそも任天堂自身がプレスリリースという形ではアナウンスをしておらず(ゲーム業界的にはそれが普通なのかもしれませんが)同社の主張するところがよくわからないのと、すでに数多の報道・言説・見解が流れていますので脇に置いておくとして…NHKをはじめ各局のテレビのニュースや全国紙のトップが「ポケモンGOが日本に上陸」と伝える時に、何よりも心の底から「ふ〜ん」と思ってしまうのは、そのポケモンGOは「タダのスマホのアプリ」なのに、ということです。このタダというのは「単なる」という意味もありますが、やはり「無料」というのが近いです。

無料の、単なるスマホのアプリが、日本でもダウンロード(以下、DL)できるようになった、ということがここまで話題になる、さらにそれがニュースのトップで扱われる、というのは何とも不可思議な印象です。だって課金さえしなければ、本当に「タダ」なわけです。スマホのゲームアプリなんて大半が無料なのだし、そもそも無料のものが配布されるというだけで、ここまでニュースになるものなのでしょうか。

妙なことを書くようで恐縮ですが、皆さん、想像してみてください…これが「ポケットモンスター」ではなく「ポケットティッシュ」だったらどうですか? 『ついに日本でもポケッティの配布が始まりました! 受け取る時は人にぶつからないように、使ったティッシュはその辺に捨てないように注意してください!』とか、もう違和感しかありませんよね。これと同じ心境になるのです。

かつて「ドラクエ」が社会現象になった際には、数千円のゲームソフトを買うために早朝や前日から店の前で列をなす人がいて、そこにはわざわざ店まで出向いて「購買する」という要素があったため「わざわざみんなお金払ってまでやりたいゲームなんですねぇ」程度のニュース性はあったのかな、と理解できる部分もありました。iPhoneの発売とかもその部類だと思います。確かに今回も、株価が最高値を更新するといった経済の話題も付随していますし、先行した諸外国での危険行為は日本でも注意して、と言いたいのも理解できるのですが。というか、日本のニュースが言いたいのは、要はこの「注意喚起」だけですね。アメリカではこんな問題があった、だから日本も気をつけろよ、と言いたいだけ。というかさらに言えばそうした事例を流布することによって日本でも同種の「事件」が起こればまたニュース素材になるし…とまあ、そういうのは俗に「マッチポンプ」と言うのですが(ちなみにこの言葉は和製語らしいです)。

そんなことよりは、ポケモンGOのベース(原型)となった、日本では一部の熱狂ユーザーを除けばそれほど浸透しなかったIngress(イングレス)が、ゲームを攻略しながら現実世界を巡る(巡らざるを得ない)ことで、世界の見方を変えてきたことはもっと前向きに考えて良いのではないかと思います(イングレスも無料でDL可)。つまり、ゲームに参加することによって、ウチの近所のこんなところにも◯◯があるのか! と発見するとか、普段ならまず行かないような地域(それは僻地等、というだけではなく自分の住んでいる地域であっても)にわざわざ交通費をかけて出向いたりとか、普段運動しない人でもウォーキングが習慣になったとか、サイクリングを始めましたとか登山を始めましたとか…といった、イングレスをやっていなければすることのなかった新たな発見や体験や、冒険(や一部出会い)があるという意味ですが、これはポケモンGOでも同じ効果は得られそうです(中身はイングレスなので…)。

こういうものが発売されると、いえ発売前の段階であっても、すぐに「危険地帯に入り込んで危ない」とか「ながらスマホが増えて迷惑」という意見ばかりが頻出するのですが、世界とのアクセス方法が変わる可能性を持った新しい体験を提供するツール、という文脈で語っているニュースや切り口はほぼ皆無だったのではないでしょうか? だから真逆の話で、「そのように新しい世界を拓いてくれるかもしれないアプリがタダ(無料)だなんて本当にびっくりですね!」というならまだわかるのです(もちろん、配信元の会社はアイテム課金等で儲けられるので、その点は問題ないのです)。

もしくは、ゲームのベースがあるとはいえポケモンというキャラクターを投入することでユーザーの裾野を爆発的に拡大した任天堂は、昔は花札の会社だったのに非常に目の付け所がよく、発想力をもってさらに飛躍しましたね、という特集ネタとか。もしくは、任天堂は長らくゲーム機が主流でしたが最近はスマホのゲームに押されっぱなしで売り上げも落ちてきていたけれど、まさにそのスマホゲームで起死回生を果たすとはなかなかやりますね、という経済ネタでも良いかもしれません。でもおそらく(テレビ、特にニュース番組専門の人は)まともに背景を取材すらしていないのでしょう。多分、どうでも良いのかもしれません。何よりも世間の人が気になっているのは、ポケモンGOが日本にいつ上陸し、誰が真っ先に危険な行動を起こすのか、一刻も早く「それ見たことか懸念した通りになった」と言える日を待ち構えている、その前振りということなのであって、それ以外に「ニュース価値」など感じていない。でなければ、記者が実際にゲームをやってみて、早速危ない目に遭いましたなどという記事が一面に出るわけがないのです。

でもやっぱりそんな話題だけなら、メディアがこぞって、ただ無料の配布物の告知をしただけなのであって、到底ニュースとは認められません。ニュース価値があるとすれば、このゲームが日本に入ってくることの意義や可能性を、日本人が新たに得られるかもしれないプラスアルファの世界を予測しながらも伝え、さらにはなぜ子供たちの夏休みに合わせてリリースしたのかという背景や、このアプリで子供たちが得られるかもしれない価値のある体験にフォーカスもしてみる…その上で危険行為を予防するメッセージを配信していくことにしかないのではないでしょうか。

追記:今回はやや暴論が過ぎたかもしれません…。ポケットティッシュの話を書きたかっただけなんです(笑)。