「ねほりんぱほりん」から想像する、広報がイノベーターになる日 ②

それにしてもこの「うちは◯◯を扱っている会社なのだから、◯◯を売らなきゃしょうがない」的なセリフは、モノやサービスを扱う会社に勤めている方で、およそ言ったり聞いたことがないという人は少ないのではないかと思います。もし、そんなセリフ聞いたことない、そんな考え方の人見たこともないという人がいたら、それはそれで、結構深刻な事態であるような気もしますが。

なぜなら、現在は超高齢社会で、人口減少社会であり、さらには豊かさの面で飽和(成熟)しきった社会でもあり、近い将来、労働力のいくつかがAIに置き換わるとか、残業時間を国が減らす取組みを始めたといったニュースに触れるまでもなく、これまで当たり前と考えていたことなど、もはやどれもこれも当たり前ではない時代になっているからです。ですから、時代に即してアップデートし(ようとし)ている会社であれば、前に進もうとするグループと、会社が何かしてくれるのを待つだけの旧態依然グループとの間で意見の対立が起き、そういうセリフが(旧態依然側から)ちらほら出てくるはずなのです。もちろん、前に進もうとする人に世代や経歴は関係がなく、現状認識をどう捉えているかに尽きることなので、年齢の高い方でも新しい発想をもって会社を変えようとする人もいますし、若い世代でも会社に依存し、そのくせ会社が悪いなどとボヤくだけの人は普通にいるわけですが…。

今回、事例を列挙してみてなおさら実感するのは、絶滅危惧種的な扱いを受けている企業や業界ほど、どうにか生き残らなければという自浄作用が働いて立て直しの方向に向かうのに対し、中途半端に経営が安定し(ていると思い込み)、あぐらをかいていた企業や業界の方が行き詰りやすい、ということでしょうか。

折しも、巨大な老舗電機メーカーが、いかにも容易に飛びついてしまいそうな巨大電気エネルギー事業の失敗で(それだけが原因ではなさそうですが)、結果的に負債が会社の資産を上回る事態を招き寄せたのとは非常に対照的に、もはや社会的に信頼を失墜し、電力の自由化でユーザー離れも起こしかねない電力会社(っていうか、東京電力)が、自社の保有する「鉄塔」や「送電線」を利用した「ドローンハイウェイ」の構想を発表したばかりです。当初はドローンが送電線に衝突しないようにするという発想だったのかもしれませんが、結果的には送電線をドローンの道標とする方向に舵を切り、儲かるかどうかは別にしても、まさに自社が創業時から保有する資産(=送電線や鉄塔)を今の時代にマッチングさせようとする好例だと思います。

ここでふと気づくのですが、このような革新的な発想をするのにこそもっとも相応しい人材というか、うってつけの部署が目の前にありはしないでしょうか? 個人的には、それこそまさに「広報」がするべきだろう、と思えてなりません(広報のない会社もありますが)。

会社が開発・販売する商品やサービスはもちろん、自社の特徴やどのような理念を掲げているかまで熟知している広報こそが、こうした「会社の次のステップ」を想像したりイメージできるはずなのです。あとは具体的な行動に出るだけ。よもや広報の人自身が「うちは◯◯を扱っている会社なのだから、◯◯を売らなきゃしょうがない」とか「そんな企画は業界団体がやればいい」などということを安易に口にするのは恥ずべき行為だと確信します。

そこでひとつ、具体的な方策として考えられそうなのが「社内ベンチャー」の方法論です。社内ベンチャーとは字義通り、まさにベンチャー企業を社内から生み出そうという発想です。一般的には利益にすぐに直結しなさそうとか、新たな開発に経費がかかるために資金力が必要ということで、経営状態に余裕のある会社がこういうことをする傾向がありますが(米国の大手検索サイトの会社とか)、そこまでガチガチな方法ではなく、もっと柔軟な形での社内ベンチャー的なもの、で全然構わないのだろうと思います。

③へつづく