「ねほりんぱほりん」から想像する、広報がイノベーターになる日 ③

社内ベンチャーの成功例のいくつかは、起案した人が所属する会社と、実はあまり関係のない業種やサービスを扱っているものも結構あるようですが、そういうことではなく、ここでしたいのは、あくまでも今自分が所属している会社の業種・業態を活かした新たな事業を広報が考えるという提案です。

自社の得意領域をベースにする以上、アイデアはいくらでも出てくるでしょうし、資金力がそれほどなくても実現できるものもあるでしょうし、他社とのコラボレーションという方法で生み出せるものもイメージしやすいかもしれません。

先日も家電量販店をブラブラしていてふと気付いたのですが、炊飯器というのは、もちろん炊き上げる加減などは電気制御ながらも、各社がメインで競っているのは「釜」なのです。でも釜というのは電機メーカーからしたら自社の得意領域ではありませんよね、きっと…。何かをつくるときに自社ではすべてできないが、別のもう1社が参画してくれたらイケるのに。と、そういう発想がもっとこの先、生まれてきても良いように思います。

例えば製薬会社であれば、すでに一部でIOTの活用なども考えられ始めているようですが、そうしたものと連動した生活習慣病患者専用のフィットネスジムを開設するとか、医療従事者向けの患者対応などの教育サービスを人材開発企業と共同で開発するとか、薬事法という縛りの下でもできるビジネスはかなりあるはずです。

例えばガソリンメーカーであれば、電気自動車の普及に向けて、GSをソーラー発電や地熱発電の拠点とし、その「再生可能エネルギー」を街ぐるみで普及促進していき、街を丸ごと自然エネルギータウンにしてしまうとか。

タクシー会社の一部では、既存のタクシーで「モノ」を運ぶ、物流の足にするという発想はすでに実用化されつつあるようなので、そういった物流の新しい形を自動車メーカーが発案したって良いのではないかと思います。既存の物流の会社が人材不足でサービス力が低下しかかっている今であればこそです。

ここで重要なのは、今抱えている社員を食べさせていかなければならないという幻想と、自社が信じてきた価値観を一度白紙にしなければならないということです。単価の高い製品でなければ経営(今いる社員への給与の支払い)が持続しないという考え方を捨て、ユーザーが本当に求めているものは何なのか? 困っていることは? をきちんと把握したり想像したりする感性を醸成し、新事業でも利益が得られると確信を持つことだと思います。

繰り返しになりますが、それができるのは、その思考をするのに最も近いのは「広報」ではないかと思うのです。もちろん今でも、社内に転がっている、実は広報のネタになるのに埋もれていたものを拾い上げるようなことも重要なプロセスです。しかし同時に、並行して、会社の経営が持続するように自ら働きかけていくことだって求められてくる時代だと実感します。手をこまねいて、ただ座して会社の先行きが悪化していくのを待ち、本当に会社がやばくなったら転職する、という考え方は、もう古いというか、ダサいのではないでしょうか。

これから先、大手の企業でも平気でバンバン倒産していくのは時間の問題と思います。それで雇用がなくなったとか、路頭に迷っちゃうよどうしようと嘆くくらいなら、まさに今、広報が、自社の歴史やリソースや財産と自分自身の知識と経験をフルに活用して、会社がブレークスルーできるような方向に舵を切る、真のイノベーターになることを目指しても良いのではないかと思います。(おわり)